安全・法令

産業用ロボットのリスクアセスメント|仕事で確認する記録と役割

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

10分
目次

産業用ロボットのリスクアセスメントは、設備の安全性を記事の一般説明だけで決める作業ではありません。労働安全衛生法の位置付けを確かめ、設備、作業、関係者、記録を結び付けて確認するための枠組みです。仕事に関わる人は、何を評価したかだけでなく、どの情報を誰が確認し、どの範囲を記録したかを分けて理解します。

設備全体の確認範囲を示すリスクアセスメントの図
設備全体の確認範囲を示すリスクアセスメントの図

リスクアセスメントの位置付け

リスクアセスメントという言葉は、危険性や有害性などを調査し、その結果に基づく措置を考える流れを指します。産業用ロボットでは、ロボット本体だけでなく、周辺の機械、可動部、作業の状態、関係する人の動きなどが検討の対象になり得ます。一般的な手順を、個別設備の結論と混同しないことが前提です。

努力義務としての定義

労働安全衛生法第28条の2は、製造業その他省令で定める業種に属する事業者が、危険性又は有害性などを調査し、その結果に基づく措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。これは努力義務であり、「リスクアセスメントは法的義務」と表現するものではありません。労働安全衛生法(昭和47年法律第57号、確認日: 2026-09-05)に基づく位置付けを正確に分けます。

同法の現行版は、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律により2025-05-14に公布され、2026-04-01に施行された改正まで反映されています。記事で法令の状態に触れるときは、法律名、条文、公布日・施行日、確認日を併記し、古い説明を現在の条文として扱わないようにします。

努力義務という位置付けは、確認を軽く扱ってよいという意味ではありません。設備の状態や作業内容に応じて必要な確認があり、事業者が責任を持って進めます。記事は、条文の位置付けと確認の観点を示すもので、個別設備に必要な措置の適否を判断するものではありません。

確認対象の早見表

確認する区分記録に結び付ける情報役割を分ける観点
設備ロボット、周辺機械、構成資料設計・保全・運用の情報源
作業開始から終了までの作業状態作業者と指示・確認の担当
変更対象物、工程、設定の変更点変更を提案・承認・実施する人
確認結果確認日、資料、判断の根拠記録を作成・保管する担当

この表は、どの設備にも同じ項目を適用するための様式ではありません。設備の種類、設置場所、作業の内容によって、実際に確認する情報は変わります。共通するのは、情報の出どころと確認する役割を曖昧にしないことです。

対象を整理する際は、設備名だけでまとめず、どの作業状態で何を確認したかを残します。たとえば設計時の資料、立上げ時の状態、運用中の変更は、同じ設備に関する情報でも時点が異なります。記録の時点を分けると、後から前提をたどりやすくなります。

作業開始前・動作中・変更時の場面を分ける図
作業開始前・動作中・変更時の場面を分ける図

仕事で確認する順番

確認する順番は、資料の量を増やすためではなく、必要な前提を見失わないためのものです。対象作業を整理し、設備の資料を確認し、関係者の役割を確認したうえで、記録に何を残すかを決めます。順番があっても、設備の変更や新しい情報によって前の段階へ戻る場合があります。

対象作業と情報を整理する

最初に、対象となる作業がどこで始まり、どこで終わるかを整理します。ロボットを動かす作業、対象物を扱う作業、確認や調整に関わる作業では、見るべき設備の状態や資料が異なります。作業名だけで区切らず、作業中に誰がどの位置で何をするかを確認します。

次に、設備の構成図、仕様書、作業に関する資料、過去の変更記録など、確認できる情報源を一覧にします。資料が見つからない場合は、想像で内容を埋めず、確認が必要な事項として残します。原典と確認日を記録すると、後で情報を更新する際に比較できます。

情報を並べるときは、事実、未確認、検討中の内容を別の欄にします。まだ確認されていないことを、実施済みの内容のように書かないためです。作業の状況が変わった場合も、どの事実が変わったのかを区別して見直せます。

記録と役割を分ける

記録には、誰が作成したかだけでなく、どの資料をもとに、いつ、どの範囲を確認したかを残します。記録を読む人が、同じ状態を再確認できるようにするためです。作成者と承認者、設備の情報を提供した人、作業を行う人の役割が異なる場合は、それぞれを分けて書きます。

役割分担は、責任を他者へ移すための一覧ではありません。情報の欠落を防ぎ、判断に必要な確認を誰が行うかを明らかにするものです。設計、運用、保全、現場の担当者が同じ情報を参照できるよう、資料名や確認日を共通にします。

労働安全衛生法第28条の2の調査結果に基づく措置に関する記録は、設備の実際の状態と結び付けて扱います。一般的なテンプレートを使う場合も、設備名だけを差し替えて結論を作るものではありません。現場の情報、事業者が定めた手順、確認者の判断を反映させる必要があります。

個別設備の構成・動線・資料を一般論と分ける図
個別設備の構成・動線・資料を一般論と分ける図

記事で扱わない判断

法令の一般的な位置付けを知ることは、必要な確認を見つける助けになります。しかし、個別の設備が安全か、どの保護方策で足りるか、どの規格要求に合うかは、設備の設計や作業条件に関する具体的な情報なしには決められません。記事の範囲と現場で行う判断を分けます。

個別設備の安全判定をしない

設備の安全に関する判定には、可動部、周辺の構造、作業の内容、運用の状態、変更履歴などの情報が必要です。一般論のチェック項目に当てはめただけで、特定の設備が安全だと結論付けることはできません。確認と措置の主体は事業者であり、設備の情報を把握した上で判断します。

記事を読む人が自分の設備へ当てはめる場合も、同じ型番や似た用途であることだけを根拠にしません。対象物や作業の状態が変われば、確認の前提も変わります。必要な場合は、社内の責任者や適切な専門家へ、資料と作業条件を示して確認します。

安全に関する説明は、不安をあおるためのものではなく、何を確認すべきかを整理するためのものです。判断できない部分を明確にし、確認の手順へ戻すことが、誤った安心感を避けることにつながります。

規格要求を推測しない

規格名を見かけても、記事の一般説明から規格の要求事項や適合の可否を推測しません。規格の版、対象範囲、設備の条件によって確認する内容が変わるためです。法令の努力義務と、規格に関する個別の確認も同じ意味ではありません。

労働安全衛生規則には、産業用ロボットの作業に関する規定がありますが、記事は規格の条項や設備ごとの仕様を判定する資料にはなりません。法令名や規格名を、実際の確認を省く根拠に使わないようにします。

確認資料を整理する際は、法令、設備の設計資料、作業に関する記録、社内の手順をそれぞれ別の情報源として扱います。どの資料がどの判断に関係するかを分けることで、用語だけが独り歩きすることを防げます。

規定・仕様・記録の資料の役割を区別する図
規定・仕様・記録の資料の役割を区別する図

確認の対象を記録する際には、設備名だけでなく、どの作業状態を見たかを記します。設計の資料を読む段階、設置後の状態を確認する段階、運用の変更を検討する段階では、同じ設備でも必要な情報が異なります。時点と状態を分けることで、古い記録を現在の結論として使うことを避けられます。

関係者とのやり取りでは、事実として分かっていること、資料にないこと、確認を依頼することを区別します。未確認の事項を「問題がない」と扱わず、誰がどの資料を確認するかを残します。リスクアセスメントに関する記録は、結果だけでなく、確認の前提をたどれることが重要です。

設備の変更に関する検討では、変更箇所だけでなく、前後の工程、関係する人、使用する資料への影響を見ます。一般的なチェックの文言をそのまま流用せず、変更の対象と時点を具体的にします。必要な措置の判断は、実際の設備と作業を把握した事業者が行います。

法令の条文を読む人は、第28条の2が努力義務であることと、個別の設備で行う確認の重要性を別の意味として捉えます。条文上の位置付けを正確に書くことは、確認を省くためではなく、どの根拠と役割で情報を扱うかを明らかにするためです。

記録を見直すときは、設備の名称、対象作業、確認した資料、確認日、確認者がそろっているかを確認します。結果だけが残っていて前提が分からない場合は、別の条件にも同じ評価を使うことができません。情報の不足を明確にして、必要な資料を確認します。

リスクアセスメントに関する役割を整理する場合は、情報を提供する人、作業を行う人、記録を作成する人、判断を承認する人を分けます。一人が複数の役割を担う場合にも、それぞれの行為を記録すれば、後からどの情報を誰が確認したかをたどれます。役割名より、実際の確認行為を明らかにします。

設備に関する一般的な説明を読む人は、法令の努力義務という言葉を、個別の確認を省く理由にしないようにします。記事が示すのは情報を整理する観点であり、必要な措置や安全性を結論付けるものではありません。実際の条件と定められた手順は、事業者が確認します。

確認の記録を更新するときは、前回の結果をコピーして終えず、今回の対象作業、設備の状態、関係者、資料の版を確認します。対象物や工程の条件が変われば、同じ設備でも前提が変わることがあります。時点ごとの情報を分けることで、記録が何を示しているかを正確に保てます。

リスクアセスメントという言葉を使う場合は、労働安全衛生法第28条の2の努力義務という位置付けと、設備ごとに行う確認の必要性を両方残します。条文の一般説明から、個別の安全性や必要な措置を確定しません。必要な判断は、事業者が設備資料と実際の作業条件に基づいて行います。

確認項目を工程順に並べる図
確認項目を工程順に並べる図

まとめ

産業用ロボットのリスクアセスメントは、労働安全衛生法第28条の2で努力義務とされる調査と、結果に基づく措置に関する考え方です。設備、作業、変更、記録、役割を分けることで、何を確認したかを追えるようにします。

関連する確認点は産業用ロボットの安全と法令、産業用ロボットのティーチングとは、FA・ロボットエンジニアのキャリアパス、産業用ロボットの安全柵の条件も参照できます。個別設備の安全判定や必要な措置は、事業者が設備の情報と作業条件を踏まえて確認します。

産業用ロボットのリスクアセスメントに関する記事は法令カテゴリで確認できます。

よくある質問

Q. リスクアセスメントは法律で必須ですか
労働安全衛生法第28条の2は、製造業その他省令で定める業種に属する事業者に、危険性又は有害性などの調査と結果に基づく措置を講ずるよう努めることを定める努力義務です。個別設備に必要な対応は、事業者が条件に基づいて確認します。
Q. 誰が記録を作成しますか
記事で一律に決めることはできません。設備の情報を提供する人、作業を行う人、確認する人、承認する人の役割を、事業者の体制と定められた手順に沿って分けて記録します。
Q. テンプレートだけで評価できますか
テンプレートは確認する項目を整理する助けにはなりますが、設備の状態や作業条件の確認を置き換えません。対象設備、資料、確認日、役割分担を反映させ、判断できない事項は適切な担当者へ確認します。

出典

本記事の出典は に内容を確認しています。

  1. 1.
    労働安全衛生法(laws.e-gov.go.jp)
  2. 2.
    労働安全衛生規則(laws.e-gov.go.jp)