産業用ロボットの80Wとは|法令上の対象範囲と除外を確認
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
産業用ロボットの「80W」は、安全性を一つの数字で判定するための値ではありません。労働安全衛生規則で用いる産業用ロボットの定義から、一定の機械を除くための告示上の要件の一つです。対象かどうかを考える際は、定格出力だけを見ず、告示の三つの除外要件と、実際の設備の情報を分けて確認します。

80Wの位置付けを確認する
80Wという表記は、産業用ロボットに関する労働安全衛生規則上の対象範囲を考える入口です。数値そのものから、設備が安全か、必要な対策が不要かを判断するものではありません。まず、どの規定で、どの機械を除外するために使われている値かを確認します。
対象となる規定の定義
労働安全衛生規則第36条第31号は、特別教育の対象となる教示等の業務に関し、マニプレータと記憶装置を有し、記憶装置の情報に基づいて自動的に動作できる機械を定義しています。同号には、研究開発中のものその他厚生労働大臣が定めるものを除くという文言があります。労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号、確認日: 2026-09-05)を読む際は、この定義と除外の関係を一緒に見ます。
除外される機械は、正式名称「労働安全衛生規則第三十六条第三十一号の規定に基づく厚生労働大臣が定める機械」、昭和五十八年労働省告示第五十一号で示されています。同告示は1983-06-25に公布され、1983-07-01から適用されています。記事で80Wに触れるときは、告示の正式名、告示番号、公布日・適用日、確認日を近くに置きます。
この告示の第1号は、定格出力が80W以下の駆動用原動機を有する機械を除外対象として示します。これは安衛則上の産業用ロボットの対象範囲に関する説明であり、設備全体の危険性や、事業者が行うべき一般的な危険防止の判断を消すものではありません。
除外要件の早見表
| 告示上の区分 | 確認する事実 | 読み替えないこと |
|---|---|---|
| 第1号 | 駆動用原動機の定格出力が80W以下か | 80W以下なら安全対策が不要という判断 |
| 第2号 | 固定シーケンス制御の単一動作の単調な繰返しか | 複数動作を含む機械への拡張 |
| 第3号 | 労働基準局長が認めた機械か | 個人や記事による該当判断 |
| 共通 | 機械の構造・性能と原典の記載 | 名称や見た目だけでの判定 |
昭和五十八年労働省告示第五十一号(確認日: 2026-09-05)には、第1号のほかに、第2号と第3号の除外要件があります。80Wだけを見て結論を出すと、他の除外要件や、定義に必要な情報を見落とします。表は確認する入口を示すものであり、個別設備の該当性を決める表ではありません。
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号、確認日: 2026-09-05)第20条は、事業者に機械等による危険を防止するため必要な措置を求めています。告示上の除外を、安全に関する検討が不要になる意味で使わないことが重要です。設備の条件に応じた確認は、事業者が責任を持って行う必要があります。

除外を判断する前に読む範囲
除外の文言は、数字や短い言葉だけでなく、前後の条件を含めて読みます。機械に複数の駆動用原動機がある場合、固定シーケンス制御装置を使う場合、個別の構造や性能が論点になる場合では、見るべき情報が異なります。設備の資料と原典を照合し、分からない点を推測で埋めません。
定格出力の見方
第1号は、駆動用原動機を二以上有する機械では、それぞれの定格出力のうち最大のものを見ると定めています。複数の原動機の出力を合算する規定ではなく、最大の定格出力を確認する文言です。銘板、仕様書、設計資料など、定格出力を確認できる資料の種類も設備ごとに異なります。
記事の説明は、どの資料を見るべきかを一般論として示す範囲にとどまります。実際にどの原動機が駆動用に当たるか、資料上の値をどう扱うかは、設備の構造と関係資料を踏まえた確認が必要です。数字だけを見て機械の適用関係を断定しません。
確認の記録には、見た数値だけでなく、資料の名称、版、確認日、対象にした機械の範囲を残します。後から別の構成図や変更記録を見た場合に、どの前提で確認したかをたどれるためです。数値と資料の関係を残すことは、誤った一般化を避ける助けになります。
他の除外要件との関係
第2号は、固定シーケンス制御装置の情報に基づき、マニプレータの動作のうちいずれか一つの動作を単調に繰り返す機械を示します。通達の補足では、二つの動作を行うものは第2号に該当しないことが示されています。単に「固定シーケンス」と書かれていることだけで、第2号と判断しません。
第3号は、前二号以外で、構造や性能などから労働者に危険が生ずるおそれがないと労働基準局長が認めた機械に関するものです。記事や現場の担当者が、第3号に相当すると決めるための条文ではありません。具体例や認定の判断は、一次資料で確認できる範囲を超えて説明しません。
三つの要件は、似た機械を同じように扱うための見た目の基準ではありません。第1号から第3号までの文言、対象とする機械の情報、確認の主体を分けて読むことで、数値の説明を安全に関する過度な結論へ広げずに済みます。

仕事で確認する記録
設備に関わる仕事では、法令名や数字を知っていることと、個別設備の該当性を判断することを分けます。現場で必要になるのは、対象となる機械、確認した資料、担当する役割、決定した人を追える記録です。法令の一般説明を、作業の許可や安全確認の代わりにはできません。
安全性と規制対象を混同しない
80W以下という条件は、告示における除外要件の一つです。これを「危険がない」「保護措置は不要」という意味に置き換えると、法令が区別している事項を混同します。労働安全衛生法第20条の危険防止に関する枠組みと、安衛則上の産業用ロボット規制の対象範囲は、同じ言葉で扱いません。
設備の安全に関する確認は、用途、可動部、周辺の構造、作業の状態、関係者の役割などを踏まえて行います。80Wという数値は、その確認を省く理由にはなりません。記事を読んだだけで設備の安全性や法令適用を決めず、定められた手順と責任者による確認を行います。
記録を書く人は、法令の説明と現場で確認した事実を別に残します。前者には告示名・条文・確認日、後者には対象設備・資料・日時・確認者を置きます。この二つを分けることで、一般ルールを個別の結論として誤用することを避けられます。
個別判断を事業者へ委ねる理由
法令に基づく措置の義務主体は事業者です。設備の設計、運用、作業内容、現場の状態を把握している者が、必要な確認を行います。記事では原典を読むための観点を示せますが、個別の機械が除外に当たるか、どの措置が必要かを判定することはできません。
確認を依頼する際は、機械の名称だけでなく、構成、駆動用原動機に関する資料、動作、作業の状況、現在の運用を整理して伝えます。判断の材料を工程順にそろえると、相談を受ける側も前提を確認しやすくなります。資料にない事項は、分からないものとして共有します。
80Wの説明を仕事に生かすなら、数字を覚えることより、どの告示、どの号、どの資料の情報かをたどれるようにすることが有効です。適用対象と安全上の検討を分けて記録する姿勢は、設備の変更や引継ぎの際にも役立ちます。

確認の過程では、告示の第1号を見たか、第2号又は第3号に関する情報も確認したか、どの資料が根拠かを区別します。数値の記載がある仕様書を見つけても、それが定格出力を示す資料か、対象機械の全体を示す資料かを確かめます。資料の一部だけを取り出して、除外に当たるという結論へ進めません。
設備に変更があった場合には、以前の確認記録をそのまま流用せず、対象とした構成、資料の版、確認日を見直します。駆動用原動機や動作の状態に関する情報が変われば、前提も変わり得ます。記事の説明は確認する観点を示すもので、変更後の適用関係を判定するものではありません。
80Wという語を使った社内の説明や引継ぎでは、「告示第1号の除外要件に関する確認」と明記すると、一般的な安全評価と混同しにくくなります。数字の意味を限定して記録することで、別の人が資料を読むときにも、何を確認すべきかをたどれます。
告示の除外を確認する場面では、資料を読む人が何を確認したかを追えるように、対象機械の範囲と資料の名称を明らかにします。外見や通称が似ていても、駆動用原動機、動作、構造に関する情報が異なれば、同じ前提にはなりません。個別の判断を要する部分は、責任を持つ事業者の確認へ戻します。
法令に関する説明を引き継ぐ場合は、昭和五十八年労働省告示第五十一号の第1号・第2号・第3号という区分、確認日、原典のURLを残します。数字だけを伝えるより、根拠と対象の限定を一緒に伝えるほうが、後から規定を読み直す際に役立ちます。安全上の確認と規制対象の確認を別の資料として扱います。
80Wに関する確認を記録する際には、定格出力の情報だけでなく、機械の構成、動作、該当する告示の号、確認した資料の版を残します。複数の情報が必要な理由を明示すれば、数字だけで安全性や制度上の対象を決める誤解を減らせます。設備の変更後には、以前の記録の対象が現在も同じかを確認します。
法令の説明を読む人は、除外の効果と、事業者が設備の危険を防止するために行う確認を別のものとして扱います。告示に該当するかどうかと、現場で必要な安全上の検討は同じ問いではありません。判断できない点は、原典と設備の情報を持つ担当者へ確認します。
確認した内容を引き継ぐときは、告示の号、資料の名称、対象機械、確認日を対応付けます。80Wという数字だけを単独で伝えません。
資料の記載が不足する場合は、除外に当たると推測せず、確認が必要な事項として扱います。

まとめ
80Wは、産業用ロボットの安全性を表す数値ではなく、昭和五十八年労働省告示第五十一号にある除外要件の一つです。定格出力、固定シーケンスによる単一動作、労働基準局長が認めた機械という三つの要件を、原典と設備資料に分けて確認します。
関連する法令上の位置付けは産業用ロボットの安全と法令、産業用ロボットのティーチングとは、FA・ロボットエンジニアのキャリアパス、産業用ロボットの特別教育も参照できます。個別の適用や安全上の措置は、事業者が設備の情報と作業条件に基づいて確認します。
産業用ロボットの80Wに関する記事は法令カテゴリで確認できます。
よくある質問
- Q. 80W以下なら安全対策は不要ですか
- 不要とはいえません。80W以下は昭和五十八年労働省告示第五十一号の除外要件の一つであり、労働安全衛生法第20条に基づく機械等による危険防止の確認まで不要にするものではありません。
- Q. 複数の駆動用原動機がある場合はどう見ますか
- 告示第1号は、駆動用原動機を二以上有する機械では、それぞれの定格出力のうち最大のものを見ると定めています。どの資料でどの原動機を確認するかは、設備の構造と関係資料を踏まえて確認します。
- Q. 特別教育との関係はどう確認しますか
- 安衛則第36条第31号・第32号の対象業務と、告示における産業用ロボットの除外の関係を原典で確認します。教示等・検査等の具体的な作業や設備の状態は個別に異なるため、事業者の定めた手順と責任者による確認が必要です。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.労働安全衛生規則(laws.e-gov.go.jp)
- 2.労働安全衛生規則第三十六条第三十一号の規定に基づく厚生労働大臣が定める機械(mhlw.go.jp)
- 3.労働安全衛生法(laws.e-gov.go.jp)